余所者-よそもの-【 3 】



「どうしてそんなに帰りたいの?」

「帰りを待ってる人がいるから」

「……待たせておけばいい」


私は首を横に振って、声にならない程度の小さな声で笑った。



「私も『ただいま』って、言いたい」

「………」

「みんなに『おかえり』って、言ってもらいたいよ」



私がそう言うと、千景の肩が震えた。



「ママには、僕がいるじゃないか……」

「私には、千景以外にもたくさんの大切な人がいる」

「どれが一番大切?」

「一番とかない。『大切』は、何かと比べられないから大切なんだと思う」

「……ママには、いっぱい大切なものがあるんだね」

「それは、そうだよ」


「そっか。僕だけじゃダメなんだ……」



うつむいた千景の目から、大粒の涙がぽたぽたと畳へ零れ落ちる。

深い緑の畳の上に、小さな濃い染みがいくつも広がった。



「ダメじゃない」

「………」

「千景といる時間も、大切だった」

「だったら、」

「でも」

「………」

「AnBarのみんなといる時間も、大切なの」