「私は、千景にそんなことしてほしくない」
「……僕のこと、嫌い?」
「ううん」
「じゃあ、僕のこと、嫌いになる?」
「ううん」
「じゃあ、じゃあ……」
「………」
「僕がそんなことをしなくなったら、嬉しい?」
「うん」
「そうしたらママは、僕とずっと一緒にいてくれる?」
千景のその問いかけに、私は首を横に振った。
「ううん。帰る」
「だったら僕は……」
「帰りたいのは、千景が嫌だからじゃないよ」
「………」
「私には、帰る場所があるから」
千景には、何度も話をした。
帰りたいことも、帰りたい理由も。
AnBarの話を、何度も聞かせた。
ユキがいて、サンコンがいて、バンがいて。
そこに集まる、潤と、リンコがいて。
私にはとても大切な場所だと、何度も話した。
そのたびに千景は「そうなんだ」と言って、二言目にはいつも「でも、帰せない」が続く。
それが、今。
目の前の千景は肩を落として、俯いた。


