「ああ、ちょっとね。自業自得の怪我」
「ナイフを出したの?」
「うん。そしたら手が少し滑っちゃって。大した怪我じゃないよ、刃先がちょっと掠めただけ」
傷に目を落としながら、なんてことないって風に言う千景。
私は彼の目をまっすぐに見た。
「千景」
「なに?」
「ナイフはもう、使わないで」
「どうして?ナイフは楽なんだよ。身体使うよりもすぐに黙らせることができるから」
平然と話す千景に、私は自分の右の手のひらを見せた。
「これ、千景のナイフがつけた傷」
千景は、じっと見つめた。
「……ごめんなさい」
「謝ってほしいんじゃない」
「………」
「私が傷つくと、千景は悲しいんだよね?」
「うん。ごめんってなる」
「どんな人にもきっと、傷つくと悲しむ人はいる」
「そんなの、知らないよ」
「私もそう思ってた」
目を丸めた千景が、私と視線を合わせた。
「千景が怪我したって、悲しくなんてならないって思ってた。千景はユキさんも、リンコさんも傷つけたから。私を悲しませたから」
「僕……」
「でも、今は、」
「………」
「千景が傷つくのも、千景が誰かを傷つけるのも、悲しい」
眉をひそめて訴えれば、千景だって同じように眉を下げ、泣き出しそうな顔をする。


