たしかに、あの日のことを思い出すのは、少し億劫だった。
あの変な匂いの充満していた場所。
まともな記憶の最後は、地下の売人の泣き顔。
まるで長い夢でも見ていたみたいに、全ての記憶が曖昧で。
思い出そうとすれば、胃から何かがせり上がってくるような気持ち悪さを感じる。
出来ることなら、考えたくない。
思い出したくない。
だけど。
ユキの顔が……腫れていた。
きっと誰かに殴られた。
一方で、私の身体に新しい傷はない。
シドに殴られた顔。
地下の売人のナイフで傷ついた右手。
全部が最後の記憶のまま。
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