余所者-よそもの-【 3 】




「あの人は……変だよ」

「それはそうだねぇ。チカ様は自他ともに認めるアタオカだぁ」

「………」

「何せ、ドラッグを憎みながら、ドラッグと向き合い続けてるんだから」


「ドラッグを……憎む?」


Z地区の王様が?

地下の売人が?

なにを言ってるの?


訝しげになる私に、デックは「そうだよぉ」と返事をして、視線を遠くにやった。



「……母親をドラッグで亡くしたんだってぇ」

「………」

「そんでもって、あの人には10歳までの記憶がない」


千景が言ってた。

――『僕には、母さんの記憶がない』


十歳までの記憶も、母親の記憶も、どちらも、ない。

それは……



「記憶の始まりはぁ、コタツの中で固くなった母親の死体との、二人きりの生活」

「………」

「だからずっとチカ様は、人間って臭いし、腐っていくモンだと思ってたらしい」



――『生きたお母さんの声を聞いてみたかった』


千景の切実な声が頭の中に響く。

思わず私は、口を抑えた。


「……ウケるよねぇ」


軽口みたいな言葉。

私は首を横に振った。