私は何度も、脱走を試みた。
千景がお風呂に入っている隙。
千景が眠りについたあと。
けれど、窓も部屋の内鍵も全部ロックされていて、千景じゃないと開けられない。
だったら、せめて。
余計なことは言わないから、スマホで一言、ユキやAnBarのみんなに『無事』だと連絡するくらいはさせてほしいとお願いしたけれど、それも拒まれた。
電波を拾われると居場所が誰かに特定されてしまうかもしれない、という理由だった。
スマホの電源を入れたのは無言電話の証明のための一度きりで、あれが最後。
そもそも千景が私の居場所を特定できたのも、私のスマホのデータを抜き取って解析したと言っていた。
普段よく居る場所をマークして、あとはひたすら人を張った、と。
千景は私の前だと子供っぽく幼いけれど、地下の売人。
裏社会の人間であることは変わりなかった。


