「ユキさん、ひどい」
私は思わずユキと重なった手を振り払った。
「………」
振り払われた手を、ユキはしばらく宙に浮かせたままだった。
やがて、それをゆっくりと引くと、静かに俯く。
フロアに、重い沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは、リンコだった。
「だから言ったでしょ」
「………」
「アンタが立てた作戦の中で、『カナコを遠くへ逃がす』。それだけは絶対、上手くいかないって」
ユキは深く眉間に皺を寄せた。
千景が「ママ」と口を開く。
「ママが遠くに逃げれば、ママに危害が及ぶ可能性を限りなくゼロにできる」
「………」
「でも、ここに残ればそうはいかない。守りも固めなきゃいけない。そこに人員を割く必要も出てくるだろう」
「それは、かえってみんなの迷惑になる?」
「デメリットだけ挙げればそう」
私が残ることで。
少なからずユキの立てた作戦に穴ができる。
私が言ってることは、ワガママなのかもしれない。


