ある時、千景がふと呟いた。
「お母さんみたい」
「お母さんじゃないよ」
「じゃあ……ママ?」
「やめてよ。意味同じだし」
それから千景は私のことを「ママ」と呼ぶようになった。
呼ばれる度に「やめて」と注意したけれど、彼は楽しそうに「ママ」と呼び続けた。
返事をしないようにしていたのに、用件を聞くためには結局振り返るしかなくて。
「ママ。ドライヤーやって」
「……『ママ』って呼ばないで。ドライヤーだって自分で出来るでしょ」
「ママにやってもらった方が髪が綺麗になる」
「千景は櫛を通さないからだよ」
「自分じゃ上手くできない」
そうやって、いつの間にか『ママ』のあだ名が定着してしまった。


