中に入り、エントランスを抜ける。
透明の防音壁の向こうには、壁面を流れる水と、懐かしい青いライト。
表の電子看板は消灯していたのに、店内はすっかり開店仕様の灯りがともっていた。
L字の角を曲がれば――……
「とっとと準備しろよ、サンコン。もうカナコちゃん来るぞ」
「やってます。ほらバンくん、早くテーブルを動かしてください」
「だって!チカさんとデックさんが退いてくれねぇんだ!」
「チカ様ぁ。俺ぇ、腹減りましたぁ」
「そこのもじゃ口ピアス。先に飯出せ。僕も腹が減った」
フロア中央のテーブルに座る千景とデック。
その周りに立ち尽くす、サンコンとバン。
カウンターのチェアに掛けて、四人を冷ややかな目で見つめる、潤とユキ。
騒がしいフロア。
ボケっと突っ立ったまま動けないでいると、リンコが私の前に立った。
「ちょっと!用意しておいてって言ったじゃない!」
リンコが怒声を上げれば、全員がこちらを振り向いた。
「まったくもう……」
リンコはそう呟くと一歩退き、私の両肩を掴んでグイ、とみんなの前に出した。
「主役。来ちゃったわよ」
集まったみんなの視線が、くすぐったい。


