「カナコ」
「………」
「ユキちゃんは元々、興味なんてなかったでしょうね。この街がどうなろうが、誰が上に立とうが」
私は後ろを振り返り、リンコを見上げた。
「だってあの子、何かに執着することもなければ、誰かに期待することだってない。面倒なことは大嫌い。権力なんて持ったって邪魔なだけ」
「………」
「でも、変わったわ」
――『俺がここで商売をするのはシトウに振り回されたくなかったからだ』
――『自分のしたいままに商売するために、何の利権も柵(シガラミ)もないここを選んだ』
ユキがここに店を構えたのは、誰にも縛られず、自分の好きなように生きるためだった。
リンコの言う通り。
あの頃のユキと、今のユキは違って見える。
「アタシも変わった。この扉の向こうにいる連中だって、きっとそう」
「……みんな、変わった?」
「でもね、怖くなんかないわ」
『怖くなんかない』?
……私は、怖いの?
何が怖いんだろう。
街が、みんなが、変わってしまったこと?


