余所者-よそもの-【 3 】



「本名を教えたってことは。トウジ、私の昔の話をカナコに話した?」

「少しだけ。音信不通だったことの愚痴を聞いてもらった」

「男が愚痴なんて言うんじゃないわよ」


リンコは茶化すように笑って、窓の向こうにある自分の店に視線をやった。


「酷い男よねぇ。自分が生きたいように生きるために、過去を捨てた」

「リンコさん……」

「前まではね。翔だった頃の自分なんて、全部いらないって思ってたの」

「………」

「でも、アンタといるうちに気付いたのよ」


リンコは、まっすぐで温かい瞳で私を見つめた。


「別に、捨てなくてもよかったって」

「………」

「男だった翔も、今のリンコも。どっちも、アタシ」


ふっ、と零れた艶っぽい笑みから、目が離せない。


「だから『SHOW-Me』。アタシは自分の店にあの名前をつけた」


男でも女でも。

リンコは、リンコ。


私が笑みを返したところで、運転席から声が飛ぶ。


「それにしても、安直すぎる名前だけどな」

「うっさいわよ」


「それにお前。今の名前の方がどうかと思うぞ。だって『リンコ』って……」


「やめてよね。もういいから、さっさと車出して」

「あいよ」

嫌がるリンコに、黙って車を発進させるトウジ。


……『リンコ』って名前にも、何か意味があるのかな。