……リンコが、私のために。
でも。
「どうして、10年も離れていたんですか?」
「アイツが一方的に俺を切った」
「……切った?」
「高校を卒業してすぐのことだ。当時、アイツの周りには大勢の仲間がいた。俺もその内の一人。それが急に連絡を取れなくなった。俺だけじゃない、全員だ。家に行ってもいない。どこに消えたか、行先だって誰も知らない」
「………」
「アイツは何も告げず、何も言わず、人知れず俺たちの前から消えた」
「なんで……」
リンコは人を大切にする。
仲間を、何よりも大切にする人だ。
いつか、最高の店を造りたいと話してくれたときだって。
――『スタッフが幸せじゃなきゃダメ』
――『金を生むのは金じゃない。夢を持った仲間よ』
そんなリンコが。
何も言わずに、大切な仲間の前から消えた。
どうして……。
「多分、俺たちには言えなかったんだろうな。――女になりたいって」
その言葉に、顔を上げた。
「男だったアイツに、俺も、俺の周りもみんな憧れてたから」
「憧れ……?」
「俺ら、族をやってたんだよ。若気の至りってヤツ。アイツはそのトップ」
「族、ですか。リンコさんが?」
しかも、トップってことはいわゆる総長ってやつだ。


