今日はリンコが来る日だったんだ。
私はエントランスから上がってくるであろうリンコを迎えるために、玄関の戸を開けた。
後ろに立つユキに、
「ユキさん、さっきの――」
と尋ねようとしたところで。
「カナコ!」
開けた扉の先。
廊下からリンコに呼ばれた。
どうも、今日はゆっくりユキと話ができないらしい。
「行くわよ!」
半分ほどしか開いていなかった戸が、リンコによってガッと全開になる。
……行く?
「どこにですか?」
「ちょっとユキちゃん!カナコに話しててって言ったじゃない!」
どうしてかリンコはユキに怒ってる。
ユキは不服そうな顔でリンコを見た。
「今、話そうとしてたところだ。来るのが早すぎる」
「だーって!時間がないわ!」
「………」
「女には支度ってモンがあるの!いい?今からアタシがカナコを預かるわ」
リンコがそう言うと、ユキはグッと眉間に皺を寄せた。
「待て。護衛は」
「トウジを連れてきてる」
「それだけじゃ足りない」
「わかってる。アタシたちの行先を伝えるから、地点の見張りを移動させて」
「………」
「ユキちゃんがやってくれないなら、チカちゃんにやらせる」
わからない二人の会話。
唯一、リンコの言う『チカちゃん』は千景のことはわかった。
……地点の見張りって、なんだろう。


