「もう、ただの飲み屋じゃねぇぞ。Z地区の人間が出入りしたり、露天街の人間が出入りしたり」
「………」
「小さい抗争からデッカイ抗争まで、AnBarから始まるんだ!」
「……それって」
「俺の目に狂いはなかった。やっぱユキさんはデカい男だ!マジで俺、ついてきてよかったよ!この調子ならきっとシトウを――いや、紫ど……」
「喋りすぎです」
意気揚々と語るバンの口が止まった。
ソファまで大きな一歩で詰め寄ったサンコンが、大きな手でバンの口を丸ごと塞ぎ込む。
「ユキから言いつけられていたでしょう」
「悪り……つい」
やっぱり。
ユキは私に言ってないことがある。
……ううん、違う。
きっと敢えて、言わないようにしてくれていた。
シトウが、AnBarが、今どういう状況なのか。
ユキは『大丈夫』『心配しなくていい』と表面的なことは話してくれたけれど。
それ以上のことを、私から聞いたこともなかった。
シトウのこと。
シドのこと。
考えれば、今でも胸の奥が少し苦しくなる。
「………」
たぶん、ユキはそれを知っているから。
だから今は、私には話さない。
私が元気になるまで。
外で起きていることは、全部外に置いてくれている。


