やがて白い器に入った温かいお粥が運ばれてきた。
私はそれを眺めながら、どうしてもユキやリンコのことが頭をよぎる。
「………」
地下の売人に見守られながら食べられたのは、半分ほど。
それ以上は胃が受け付けなかった。
食べ終えたお皿の代わりに、彼が手を差し出す。
その手のひらに乗っていたのは、いくつかの錠剤だった。
「薬飲んで」
「……いやだ」
「どうして?」
「………」
「ただのビタミン剤だよ」
地下の売人はそう言うと、自分の口に入れて呑み込んで見せた。
『安心していい』と言っているんだろうけれど。
錠剤を見ると、どうしても嫌なことを思い出す。
それに……
「あなたは地下の売人でしょ」
この人からの薬は、信用できない。
彼はあからさまに肩を落として「そっか」と呟いた。
無理に飲ませる気はないらしい。
「……僕の名前は、千景(チカゲ)」
「なに、急に」
「地下の売人じゃなくて、『千景』って呼んで」
「………」
「ホントの名前で呼んで欲しい」
私は返事をしなかった。


