「かぁこにとっても、まるでアイツは特別だ。それってなんで?」
「あ……あの」
「なんで」
お腹に回された腕に、さらに力がこもる。
もうこれ以上ないほど、ユキと私の間から隙間がなくなった。
首筋に、ユキの顔が埋まり。
はぁ……と、苦しげな溜息が肌をくすぐった。
「ユキさん……」
「なに」
千景とのことを、一言でどう説明すればいいのかわからない。
まして、こんな状況じゃ頭もうまく回らなくて。
「怒って、ますか?」
ユキの行動に戸惑った挙句、口をついた言葉がそれだった。
だけど腕はふ、と緩んで。
くっついた身体だって、そっと離れた。
「俺……怒って……」
その声に振り返ると、ユキは呆然としている。
「……ごめん、かぁこ」
「いえ」
「怖かった?」
「怖くはなかったですけど……」
「………」
「びっくりしただけで」
「そう……」
ユキは私と顔を合わせないまま、キッチンを離れた。


