菜箸でお惣菜を取り分けて、プレート二つに並べていく。
ふと、今朝の千景を思い出した。
「あの、千景も……家に上げていいですよね?」
千景本人にも伝えたけれど、ここはユキの家。
二人は顔を合わせれば喧嘩をするけれど、仲が悪いってことはないんだと思う。
むしろ、ユキがああいう風に接することは珍しいから。
「ユキさんの家で変なことをしないように、ちゃんと私が見てますから」
「………」
菜箸を動かしながら、返事を待った。
だけど、何も返ってこない。
「……ユキさん?」
振り返ろうとした、そのとき。
「なぁ」
耳元で、低い声がした。
いつの間にか、後ろにぴったりとくっつく、ユキの身体。
お腹に回った手。
「………」
私の手に持つ菜箸から、おかずがぽろん、と落ちた。
「なんで」
「なにが……」
「どうして、アイツはお前の言うことだけ聞く?」
「………」
「それは……」
なんでだろう。
答えられないでいると、グッとお腹に回った手が引き寄せられた。


