ユキの素早い手が、勝手につくられた合鍵を千景から奪った。
「いいよ。1つくらいくれてやる」
「……お前」
「スペアは大量につくってある」
怒ったユキの手がまた千景に向かう前に、私は慌てて声を挟んだ。
「千景」
「何?」
「ここはユキさんの家だよ」
「うん」
「勝手に鍵を作っちゃいけないし、勝手に入るのもダメ」
「………」
「ちゃんとインターホンを押して入ってきて」
「でも」
「つくった合鍵も全部ユキさんに返して」
少し厳しい声で言い聞かせると、千景の頬がぷうっと子供みたいに膨らんだ。
「……わかった」
「じゃあ、いってらっしゃい」
不貞腐れる千景に送り出しの挨拶をすれば、千景の機嫌はいくらか戻って。
「いってきます!」
と、家を出て行った。
ふと視線を感じて、振り返る。
寝室の前に立つユキと、パチリと目が合った。
「……ユキさん?」
だけどユキは眉間に皺を寄せた顔をふい、と逸らすと、何も言わずに部屋を離れた。
……どうしたんだろう。


