余所者-よそもの-【 3 】



ユキは慣れた様子で物を踏みつけながら、玄関を上がっていく。

懐かしいな、なんて思いながら一歩中に入れば、前からユキが手を差し出してきた。


「足場悪いから」


「………」

家の中で使われる言葉じゃないんだけどな。

散らかした本人が真顔で言うものだから、笑っていいのかわからない。


私が手を握ったところで、ユキが後ろを睨みつける。


「お前は帰れ。入ってくるな」

「気を使ってくれなくて大丈夫」

「使ってない」

「使えよ。こんな汚い家」

「じゃあ帰れ」


千景は問答無用で家に上がり、廊下を進むと、寝室の戸を勝手に開けた。


「ママ。今日はもう寝よう。移動で疲れただろうから」


ユキと共に寝室に入れば、ベッドの上だけは無事だった。

物が置かれていない。


「ソファでいいですよ」

「ダメに決まってる」


ユキは私をベッドに寝かせ、布団を掛けた。


「じゃあ僕も一緒に寝よ」

後ろからやってくるなり布団に入ろうとした千景を、ユキが「ふざけるなよ、お前」と言って止めた。

ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した二人。


たしかにこれは『うるさい』。獏に同意する。


こんなのじゃ寝られない。

そう思っていたけれど。


「………」

千景の言った通り今日は疲れてしまったようで、睡魔はすぐにやってきた。

うとうとと上下しだした瞼。


ぼやける視界の先の二人に。


「ユキさんも千景も。なんだかんだ、仲いいよね」


そう声をかけると、不服そうな顔が二つ、こちらを向いて。


「おやすみ、かぁこ」

「おやすみ、ママ」


ピタリと静まった部屋の中、落ちるように眠りについた。