そうして私たちはラボを飛び出し、森を抜けた。
揃ってユキの車に乗り込み、長らくお世話になった獏の元から離れていく。
車の中では、『獏とは何もない』という弁明をして。
なんとなく二人の誤解も解けたところで。
私はようやく、気になっていたことを口にした。
「あの……今どこに向かってるんですか?」
「俺の家」
運転をするユキが、助手席に座る私をちらりと見て答えた。
するとドン、と後部座席から伸びてきた両腕が、私の肩に回された。
「安心して!僕も一緒に帰るからね!」
「千景……」
てっきり千景は文句を言うかと思ったけれど。
どうやら、ユキの家に行くこと自体には異論がないらしい。
ヘッドレストの隙間から顔を覗かせ、千景が話しだす。
「今はアイツの家がいろいろと都合がいい。シトウから離れてるし、セキュリティも悪くない。高層階なのもいいね。僕でさえ攫うの苦労したくらいだ」
「よくもぬけぬけと。お前を家に上げるつもりはない」
「ママの安心安全が何より大事」
「かぁこに触るな」
ハンドルから片手を離し、ユキが後ろの千景を捕まえようと腕を伸ばす。
「ユキさんっハンドル握ってください!」
「………」
「千景も座って!」


