もう一度、後ろを振り返った。
「獏さん、本当にありがとう」
「おう」
獏らしい返事。
すると背中から声がかかった。
「世話になった」
そう言ったのは、ユキだった。
「俺が世話したのはお嬢ちゃんだ。礼はもう嬢ちゃんから貰った」
獏がそう返すと、千景が「またな、ヤクザ医師」と軽く挨拶をする。
後ろをちらりと振り返れば、二人はもう踵を返しかけていた。
「まぁ、お前らもせいぜい頑張れよ」
「………」
「お嬢ちゃん、思ってるより気が多いからな」
獏のその言葉に、二人の足が止まる。
「獏さん?」
何を言い出すんだ。
「……オランダ、だいぶ揺れてたからなぁ。オランダっつーか、ぶっちゃけ俺に揺れてた」
「………」
「夜中に何回も俺のとこ来るし」
……待って。
「さっきも。次はいつ会えるか聞かれたし」
ニヤニヤとしている獏に、私は慌てた。


