余所者-よそもの-【 3 】



「……ノート?」


手に取り、中をめくってみると、何も書かれていない新品。

私は首を傾げた。


「毎日ここに、その日思ったことを書け」

「思ったこと?」

「なんでもいい。腹立つ、悔しい、悲しい、ぶっ殺してぇ、なんでもだ」

「なんでも、いいんですね」

「ああ。ただし、思ったことそのまま書き殴れ。出来るだけ湧いた感情のまんま。遠慮のねぇ生の感情がいい」


思ったことを、そのまま。

それが一番、難しい気がする……。


「いい加減自覚しろ。お前は自分のことを後回しにして生きてきた」

「………」

「我慢するのは勝手だ。でも、無理に飲み込んだモンはどっかに出さねぇと毒になる」


獏は私の手元にあるノートを、指先でポンポンと弾いた。


「人に言えねぇなら、ここに吐け」

「思ってることを、ここに……」

「このノートは誰にも見せるなよ。これはお前だけのモン」

「………」


「忘れるな」


私は獏を見上げた。

その眼差しは少し厳し気で、どこまでも真剣だった。


「お前の心は、お前のモン」

「………」

「何を考えるかも、何を感じるかも。もう自分以外の誰にも委ねるな」


――『じゃあ、お前の選択は?』

――『私の……もの』


選択だけじゃなく、私の感情も、私のもの――……