「……ノート?」
手に取り、中をめくってみると、何も書かれていない新品。
私は首を傾げた。
「毎日ここに、その日思ったことを書け」
「思ったこと?」
「なんでもいい。腹立つ、悔しい、悲しい、ぶっ殺してぇ、なんでもだ」
「なんでも、いいんですね」
「ああ。ただし、思ったことそのまま書き殴れ。出来るだけ湧いた感情のまんま。遠慮のねぇ生の感情がいい」
思ったことを、そのまま。
それが一番、難しい気がする……。
「いい加減自覚しろ。お前は自分のことを後回しにして生きてきた」
「………」
「我慢するのは勝手だ。でも、無理に飲み込んだモンはどっかに出さねぇと毒になる」
獏は私の手元にあるノートを、指先でポンポンと弾いた。
「人に言えねぇなら、ここに吐け」
「思ってることを、ここに……」
「このノートは誰にも見せるなよ。これはお前だけのモン」
「………」
「忘れるな」
私は獏を見上げた。
その眼差しは少し厳し気で、どこまでも真剣だった。
「お前の心は、お前のモン」
「………」
「何を考えるかも、何を感じるかも。もう自分以外の誰にも委ねるな」
――『じゃあ、お前の選択は?』
――『私の……もの』
選択だけじゃなく、私の感情も、私のもの――……


