――調合室。
私は獏の目の前の椅子に腰かけ、ユキと千景はその後ろに立った。
デスクの上にぽつん、と置かれた茶色い紙袋。
獏はその袋から続々と薬を取り出しながら、用法用量を細かに説明した。
「……ざっとこんなところだな。質問は?」
誰からも声は上がらない。
獏は取り出していた薬を再び紙袋へ戻しながら、口を開く。
「身体はだいぶ戻ってるが、まだ本調子じゃねぇ。あと1ヵ月は家で大人しくしてろ」
「1ヵ月……」
「日中はできるだけ日ぃ浴びろ。ただし外出は散歩程度、まだ1人で出歩くな。身体は動いても、すぐ電池切れ起こすからな」
「はい」
――ス、と掲げられる袋。
差し出されたのは私ではなく、後ろの二人。
「約2ヵ月分ある。その間どっちが薬を管理するか―—」
獏の言葉の途中で、袋が視界から消えた。
後ろを振り返ると、パシッと軽い音と共に、千景が袋をひったくっていた。
「薬を管理するのは僕だ。ママの身体を治すのも僕だ」
そう言った千景の手から、また袋が消える。
「返せ。かぁこは俺が看る」
薬がユキの手に渡ると、にらみ合う二人の視線から火花が散る。
そのまま二人は言い争いながら調合室を飛び出し。
薬の袋をめぐり、いつもの喧嘩が始まった。


