「……え?」
ユキの腕に、抱きかかえられていた。
「俺は今から、お前を攫う」
「………」
「嫌なら言って」
ユキが、ほんの少し顔を傾ける。
近づいた額が――とん、と私の額に触れた。
「お前なら……。俺を止められると思う」
触れ合う額が、熱い。
こんなに強く抱きしめるくせに。
私のたった一言を、こんなに怖がってる。
行くな。
離れるな。
俺を選べ。
そんな、言葉にしない彼の心の声が。
重なる額から切ないくらい、伝わってくる。
「………」
私はユキの首に、腕を回した。
頬を擦りながら、ゆっくりと彼の耳元へ、唇を寄せる。
――だったら私も。
ちゃんと、伝えたい。
彼の耳に、そっと声を打ち付けた。
「ユキさん」
私を抱く腕が、ぴくん、と強張った。
「止めません」
「………」
「だから……私を、攫って」
私を。
あなたと生きる明日に、連れて行って。


