慌てて身体を起こそうとした瞬間。 すー……と、鼻先に知っている匂いが触れた。 「………」 この、匂い。 暗闇に目を凝らす。 すぐそばに、人影があった。 「……ユキ、さん?」 私、夢でも見てるのかな。 ユキの指先が、私の唇にそっと触れる。 「声、出さないで」 耳元に落ちた声。 ようやく、本当にユキなんだとわかった。 「どうして……」 尋ねようとした私の腕を、ユキがそっと引く。 身体を起こされ、そのまま胸の中に閉じ込められた。 「………」 耳を澄まさなくても、ユキの鼓動が聞こえる。