程なくして、ユキがやってきた。
ユキはやっぱりいつも通りだった。
千景みたいに、何か言うわけでもない。
世話を焼かれ、限られた時間を一緒に過ごして。
「おい、色男。そろそろ出ていけ」
「………」
訪れた、帰りの時間。
ユキはずっと閉ざしていた口を、ようやく開いた。
「かぁこ。一緒に帰ろう」
「………」
ユキの後ろに立つ獏を、ちらりと見る。
獏は腕を組んだまま、何も言わない。
……まだ、ってことだ。
「かぁこ」
ユキに視線を戻すと。
「………」
彼は苦しそうに眉を寄せて、私を見つめていた。
「ユキさん、私……」
「……帰ろう?」
喉の奥から絞り出したようなその声に、たまらず「うん」と頷きそうになる。
でも。
「いい加減にしろ。お嬢ちゃんを困らせるな」
後ろから獏の声が飛んでくる。
「………」
ユキは俯いて私からそっと離れ、そして。
「わかった」
そう、一言だけ言うと。
静かにラボを立ち去った。


