余所者-よそもの-【 3 】



それから数日。

私の日々は、変わらなかった。


ユキと千景だって、毎日やってきた。


千景は日に日に『オランダなんか行くな』がうるさくなって。

ユキは何も言わず、いつも通り私の世話を焼いた。


そうやって、日々はあっという間に過ぎていき。

とうとう、オランダ出発日――前日。


はじめに千景がやってきた。

千景はいよいよ切羽詰まったみたいに、まくしたてた。


「まさか本気でオランダに行く気じゃないよね?」

「………」

「ずっと言ってたじゃないか。AnBarに帰りたいって」

「………」

「僕、あの男嫌いだけど。でも、それでもママがいるならAnBarって場所を僕が守るから」

「………」

「ママの大切は、僕も大切。何も怖いことなんてない。だからママ、お願い」


もう何度も何度も、言葉が口をついて出そうになる。

一緒に帰るよって。


でもそのたびに。


「………」

獏が、後ろで睨みを利かせてくる。

その目は『言うなよ』って言ってる。


ずっとこの調子だ。

もう何度も、何度も、言っていいですか?って尋ねたけど、獏は『まだだ』と言う。

『言っていい時は合図をする』って言うから、その合図を待っているけれど。


「………」


一向に、許可が下りない。

だから私は、目の前の千景にも、


「……ごめんね」

としか言えなくて。


千景は、その日。

潤んだ目を隠すように俯いたまま、ラボを後にした。


私は獏に「もういい加減、言わせてください」と言ったけれど。

それでも獏は頑なに『まだだ』と返した。