余所者-よそもの-【 3 】



「誰しもが正しく、上手く生きられるわけじゃねぇ」

「………」

「チカにとっては、あそこは生きる場所なんだろ」

「………」

「苦しかろうが、間違ってようが。アイツは自分でそこを選んでる」


コーヒーの香ばしい香りが、キッチンに広がる。


「『正しい生き方』なんざ、俺にもわかんねぇよ」

「………」

「ただ、せっかく生きてんだ。どこで、どう生きるかは本人の自由だ」


正しい、生き方。

――『どうすれば私は正しく生きられますか?』


獏は、最初からずっとそうだった。

正しさに固執しない。


「獏さん」

「ん?」

「間違ってても、いいんですか?」

「何が」

「自分で選んだものが、正しくなかったら……後悔するじゃないですか」

「そんときゃ間違えたってだけだろ。また選び直せばいい」

「………」

「生きてりゃ、何回でも選び直せる」


……生きていれば。


「……っ、でも!」


喉の奥が詰まって、声が上ずった。


「……でも、じゃあ。死んじゃった人は?」


自分を落ち着かせて、やっと言葉にすると。

ただ獏はコーヒーをすすって、なんてことのない顔つきで言う。


「死んだヤツが何考えてたかって、お前にわかるのか?」

「……わからない。だけど、」


野間くんが、何を考えていたかなんて、私にはわからない。

ただ、事実として。


私と関わった野間くんが、私と関わったせいで、死んでしまった。