「俺はずっとそれを傍で看てる。いいとこ地獄だ」
「……どうして、そんなこと」
「Z地区だっけか。てめぇのテリトリーの人間が身体入れるモンを、自分の身体で確かめるために」
「そんなに辛い思いをしてまで、なんでZ地区に」
……どうして千景は逃げないの?
「俺も言ったよ」
「………」
「ドラッグなんかやめちまえって。とっとと、そんな場所から出ろって」
「千景は、なんて?」
「そこじゃねぇと、生きられねぇんだと」
「……なんで?」
「俺が知るか。ただ言ってたことは、」
「………」
「『自分より堕ちたヤツ見てれば、自分はまだマシだって思えるから』」
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、私は視線を落とした。
「馬鹿だなって思うか?」
「……思いません」
「そうか。俺は馬鹿なヤツだと思うけどな」
――パチ、とケトルがお湯を沸かした合図をした。
獏はコポコポとカップにお湯を注ぐ。


