メロンに刃を入れる。
隣でカップにコーヒーを用意する獏に、私は尋ねた。
「ずっと気になってたんですけど」
「なんだ」
「後ろの。あの扉」
「………」
「あれ、何の部屋ですか?」
キッチンの後ろには、頑丈そうな鉄扉がある。
その鉄扉には鉄格子が備えつけられていて、まるで――……
「牢屋みてぇだろ」
「……はい」
獏は何をしている人なのか、よくわからない。
薬をつくる人間、と言っているのに、医者っぽいし、カウンセラーっぽいし。
横暴だし、……優しいし。
そんな獏と、何日も一緒にいて。
悪い人ではないことは、もう十分に分かっている。
けれど。
ラボの中であの部屋だけがとても異質で、不気味だった。
「あの部屋は――チカの監禁部屋」
「……千景の?」
思わず、包丁を握る手元から視線を外し、獏を見た。
「アイツは、自分で自分の身体に毒を入れる。積もり積もって毒抜きするときに、自分からあそこに入る」
「自分からですか?」
「暴れるからな。閉じ込めとかねぇと、また毒を欲しがる」
……毒は、きっとドラッグのことだ。
デックが言ってた。
――『何せ、ドラッグを憎みながら、ドラッグと向き合い続けてるんだから』


