「食べて」
それなのに。
ユキは平気な顔をして、また食べさせようとしてくるから。
「………」
私は、洗い終えた一粒のイチゴを手にとって。
「じゃあ……ユキさんも」
そっと、ユキの唇の前まで運んだ。
「………」
だけど。
ユキが、動かない。
口を開けるでもなく、猫目の綺麗な瞳をただ大きく見開いたまま。
時が止まったように固まっている。
「……もしかして、イチゴ嫌いでしたか?」
すると、ユキの持っていた真っ赤なイチゴが、ころん……と手からこぼれ落ちた。
「ユキさん?」
床に落ちてしまった実を目で追うと、掠れた声が耳に触れる。
「……たべる」
視線を元に戻すと、ユキは私の指先から、
「………」
そっと、イチゴを頬張った。
「美味しいですか?」
私は屈んで、落ちた実を拾いながら尋ねると。
「恥ずかしいね」
そう、微動だにしないまま、私と同じ感想を言った。


