「毎日電話、したよね」
「………」
「たくさん心配してくれた」
「……ちが、」
……違う。
「とっても、嬉しかった」
「違うよ」
「うん」
「わたし……あなただと思って、話してない」
「知ってる」
私の頭の中は真っ白だった。
アオイと思って話していた無言電話がこの人だった。
それだけじゃない。
並んで置かれた、二台の電話。
私のスマホに発信して見せた、もう一台。
一昔前の、古い機種。
パスワードロックもない……やけに大きくて、重たいそれ。
「その……スマホ……」
とても見覚えがあった。
いつか、知らず知らずの内に、Z地区へ迷い込んでしまった時だ。
たくさんの男に追い詰められて、知らない事務所の二階に逃げ込んで、逃げ場がなくて。
私はこのスマホから自分のスマホに電話をかけた。
助けを呼ぶために……。
――『なんか、窓から匂いがします』
――『お香。これはお香の匂い。何番かはわからないけど、とっても似てる』
――『お前、Z地区に居るのかっ!』


