「……獏さん」
私はベッドを抜け出し、扉を開けた。
獏は大きな顕微鏡みたいなものを覗き込んだまま、「なんだ?」と返事をした。
「……眠れなくて」
「ああ」
「いつものお薬が欲しいです」
やっとそこで、獏が顔を上げた。
じっと私を見るなり、
「やらねぇ」
と一言、言い切った。
私は思わず、「え?」と聞き返す。
「今日は薬なしで寝ろ」
怖い夢。
悪夢を見ないようにと、これまで何度も貰っていた薬。
それがないと、
「でも……また夢を見そうで」
「そうだな」
「………」
「怖いか?」
コクン、と頷いた私。
獏はなんでか緩く笑って、ポンポン、と頭を撫でた。
「………」
「『平気』でなければ『大丈夫』でもねぇんだな」
その言葉に、顔を上げる。
獏は私から目を逸らした。


