ユキはきっと。
こうやって、ずっと私の傍を離れずに看病してくれていたんだと思う。
だって、僅かに残る断片的な記憶。
そのどれもが、どこか苦しそうな表情で私を見下ろす、彼の顔だったから。
そう思うと、右手の温もりが胸まで伝わってきて。
きゅうっと、私の心だって苦しくなる。
気がつけば、右手に少しだけ力が入っていた。
知らず知らずのうちに、ユキと自分の指の隙間が、少し埋まっている。
「どうした?」
「あ……ごめんなさい。何でもないです」
「手、痛む?」
ユキが、私の手首をそっと持ち上げた。
自然と、私たちの視線は右の手のひらへと揃った。
ジグザグに黒い糸の浮かんだ、ナイフの傷跡。
眠っている間に医者を呼んで縫合させたのだと、彼から聞かされていた。
「痛くないですよ」
ユキは、触れるか触れないかくらいの優しい指先で、そこをそっとなぞった。
その感触に、ピクリと私の手が跳ねる。
「くすぐったいです」
思わず、緩んだ口元。
それを見たユキも。
私の手のひらに自分の手を軽く重ねてから「そうか」と、釣られるように頬を緩めた。


