何か返さなきゃと思うのに、言葉がひとつも出てこない。
「………」
ユキは狼狽える私なんてお構いなしで。
すっかりいつもの調子で私を構い始めた。
私の服の裾についた木の葉を払って、突いた膝に怪我がないか確かめて。
「おいで」
再び背中に腕を回し、今度は真っ直ぐに私を抱き上げる。
ぐん、と高くなる視界。
ユキにしがみ付いた。
「木陰に行こう」
濃淡のある新緑が、景色になって流れていく。
「でも、ユキさん。時間……」
「いい。今日はかぁこがもういいって言うまで一緒にいる」
ユキの柔らかい髪が、風に流れて、私の頬をくすぐった。


