あ。 もう、時間か。 そう思ったとき、油断した私の足が、木の根っこに掬われた。 ――ガッ、と片足を取られる。 「……っ」 地面に手をつく寸前。 ユキの腕が素早く差し込まれ、私の身体を支えた。 「大丈夫か?」 「だ、大丈夫です」 そう口にすると、また獏が頭の中に出てきた。 ……今、『大丈夫』なんだっけ。 「怪我がなくてよかった。そろそろ中に戻るか」 立ち上がったユキが、私に手を伸ばす。 「………」 この手を取れば。 私は、ラボに戻って。 ユキは、帰ってしまう。