ふと思い出した。
千景に、ユキのマンションから連れ出された日。
買い出しに行くユキに、リンコが頼んだフルーツ。
私は、ユキが何のフルーツを買ってきてくれるか楽しみにしていた。
「わかった。明日買ってくる」
そう微笑んだユキ。
私は明日が楽しみになって、一歩、足を踏み出す。
自分の足で、ザク、と踏みしめた柔らかい土の感触に、少しだけ口元が緩んだ。
ゆっくりと、ゆっくりと、森を歩いた。
ラボでも歩いていたけれど、森は足場が悪い。
広い森の木々を縫い、ユキに掴まりながら。
慎重になってラボの回りを一周した。
もう少しでラボの正面に着く。
「………」
ユキは、ちらりと腕時計を覗いた。


