話せない。
わからない、わかってもらえない。
だったら、逃げる方法を考えようと思った。
ここはアパートだ。
窓もあるし、出入口もある。
隙を見て、出られそうな場所を探してみよう。
しばらくの間、寝たふりをした。
私は一言も話さなかったし、地下の売人も何も話さなかった。
物音も消えた。
後ろにいる彼も、もしかしたらうたた寝をしているのかもしれない。
そっと後ろを振り返った。
「……おはよう!」
「………」
「どう?少しは気分良くなった?」
「ずっと見張っているの?」
「見張ってなんかいないよ。見てるだけ」
「………」
「見ていたいだけ」
嬉しそうな顔をして話す彼。
やっぱりこの人は、変だ。
おかしい。


