そんなある日。
部屋に入ろうと、駆け足で調合室を通り過ぎようとした千景。
獏が首根っこを捕まえ「走るなっつってんだろうが」と例のごとく注意をすると、あからさまに顔をしかめる。
「……お前、クサいぞ」
「あ。ずっと家帰ってないから」
「汚ねぇ身体でラボに入るな。この病原菌」
「じゃあ、シャワー貸して」
千景は獏の返事も待たず、シャワー室に駆け込んだ。
ほどなくしてお風呂から上がると、髪を濡らした状態で戻ってくる。
服はちゃんと着ていた。
「……千景、服着てる」
「そりゃ、ここ土足だし。マッパで靴だけ履いてたらおかしくない?」
「………」
そもそもお風呂上がりに服を着ない千景がおかしいんだけどな。
「ママ、ドライヤーやって!」
「いいよ」
いつかのアパートでの暮らしみたいだ。


