「食べきれなかったのは、何が悪い?」
「………」
……何が悪いって、言われても。
「お前が食べ残したのは、体調が悪いから」
「………」
「悪いのは、お前じゃなくて、お前の体調」
それは、そうだけど。
「んで?今の腹の調子は?」
「……胃が、むかむかします」
「わかった。胃薬出してやる」
獏は踵を返し、調合室の引き出しをガタガタと開け閉めする。
やがて薬を手に、こちらへ戻ってきた。
「俺はお前の体調に合わせて薬を調合する。元々そういう仕事だし、それが俺の選んだ道」
「………」
「お前の面倒を見るって買って出たのも俺。全部、俺自身が選択したこと」
どうしてわざわざ、そんな話を。
私がパチパチと目を丸めていると、手の上に錠剤が乗せられた。
「………」
手の中の薬を見る。
胃がむかむかするから、食べられなかった。
獏はそれに合わせて、薬を出した。
ご飯を作ったのも。
私の世話をしてくれるのも。
全部、獏が自分で選んでやってること。
「……あ」
少しだけ、分かったかもしれない。
「で?どうなんだよ。晩飯を残した自分のこと、許せそうか?」
食べられなかった自分を、責めなくてもいい。
これも自分を許すってことなのかな。
「……はい。許せそうです」
そう返事をすると、獏は黙って私の食器を片付けた。


