「あーだこーだ、うるせぇなぁ」
「………」
「どいつもこいつも。てめぇ勝手すぎねぇか?」
凄みを利かせた低い声。
獏がひと際強く、言い放つ。
「お嬢ちゃんがどこで、誰と、どうやって生きるか」
「………」
「ここで何よりも重要なのは、お嬢ちゃんの意志」
ユキと千景はピクリ、と反応した。
「俺がここを離れるまで、あと二週間」
「………」
「その間に、お嬢ちゃん自身に答えを出させる」
獏は最後に「わかったな」それだけ言うと、もう私たちを見もせず、薬瓶に手を伸ばした。
「………」
どこに帰るか。
あと二週間で――私自身が、選択する……。
ふと、視線に気がついた。
「………」
ユキは、私をじっと見つめていた。
後ろにいた千景がグッと拳を丸める。
そして、一歩部屋の中へと踏み込むと。
――バタン、と。
ユキの視線を私から遮断するかのように、扉を閉じた。
千景はそれから、『オランダなんか行くな』と言い続けた。
『どっか逃げるなら僕と一緒に逃げよ』とか、『アイツはロリコンだから危ない』とか。
「………」
私は、どうしたいんだろう。
千景のどの言葉にも、ロクに返事をすることができなかった。


