余所者-よそもの-【 3 】



しん、と重い沈黙が流れる。

二人の視線が痛くて、俯くことしかできない。


そんな私を見かねたように、獏の声が沈黙を割る。



「――じゃあ。俺がもう一肌脱ごうかね?」


助け船のようなその声に、私は顔を上げた。



「俺は二週間後にオランダに飛ぶ。薬の原料探しの旅だ。お嬢ちゃん、一緒に行くか?」



……オランダ?

私が目を丸めれば、千景は目くじらを立てて獏に噛みついた。


「何言ってんの。面白くないな、その冗談」

「冗談でもなんでもねぇよ。これは超現実的なプラン」


パン、と獏が手を叩く。


「冷静になって考えてみろ?」

「………」

「お前らの話だと……このお嬢ちゃん、ヤバいヤツに狙われてるんだろ?んで、お前らはその憎き敵をやっつけると」

「………」

「俺とお嬢ちゃんがオランダで旅してる間にサクッと倒しとけよ。敵さんもオランダまでは着いてこれねぇだろうし」


獏は「ハハッ」と愉快気に笑う。


「俺らが戻ってきたときに、世界が平和になってたらいいな?」


まるで他人事。

いや、シトウに住んでいない獏からすれば、完全な他人事。


馬鹿にしたとも取れる言い草に、ユキと千景は揃って眉を吊り上げた。


「ふざけるな。遠くに逃がすならお前でなくていい」

「いい加減にしろよ、クソヤクザ」


それでも獏の調子は崩れない。

詰め寄ってくる二人を前に、耳の穴をほじりながら聞き流していた。