「ママ!」
ユキが帰ると、入れ違いになって千景がやってきた。
獏はバタバタと駆け寄ってくる千景の首根っこを掴んで、「ラボで走るな」と注意をした。
「コイツ、さっきまで色男が構ってたから、ずっと起きっぱなしだ」
「だから何」
「コイツは今から寝る。お前も今日は帰れ」
「無理」
突っぱねる千景を、獏が睨みつけた。
「獏さん、私まだ起きてます」
「あ?お前、眠いよな?」
「……す、少し眠いですけど、ちょっとなら」
私がそう言うと、千景は獏の手から逃れて、こちらにやってきた。
獏は呆れた顔で、奥へと引っ込んでいく。
「一緒に寝よ。僕も眠いや」
千景は椅子に座り、私の眠るベッドに頭をコテン、と預ける。
「ママ、あのヤクザに変なことされてない?」
「されてないよ」
「アイツ怖いでしょ。でも腕は確かだ」
確かに、少し怖いかも。
何をやっている人なのか、よくわからないし。
「元気になってきたね」
「うん。点滴もさっき外してもらった」
千景は本当に眠いようで、うとうとと瞼を上下させた。


