――それから、数日。
カナコは少しずつ、起きていられる時間が長くなった。
短い会話や受け答えができる程度には、頭がはっきりしてきた。
そうすると問題が起きた。
カナコは自分が今どこにいるかも、もう、わかる。
それは、ユキも千景も居ない深夜だった。
「帰らなきゃ……」
――ドサリ、と落ちるようにベッドから降りた。
カナコが休んでいた部屋の隣は、調合室。
獏はすぐさま物音に気付き、ゴム手袋を外しながらゆっくりとカナコに近づく。
「おい。どこ行く」
「……かえる」
「どこに」
「リビドー」
「あ?そりゃ、どこだ?」
長らくまともに動いていないカナコの身体。
筋力は落ち、足腰だってまともに立たない。
獏は、カナコがどこに帰ろうとしているのかわからない。
幻覚を見ているのか、それとも何か目的があるのか。
彼女を好きにさせながら、会話を続けた。


