「かぁこ」
その呼びかけと共に、カナコの意識がゆっくりと浮上していく。
右手があたたかい。
手を握ったユキが、カナコの顔を見下ろしていた。
その悲痛な面持ちに、カナコはどうしたんだろう?とわずかに首を傾げた。
「ママ!」
左からの呼びかけ。
首を傾ければ、千景はえんえんと泣いている。
カナコはぼうっと上を見上げた。
コンクリートの天井に、むき出しの蛍光灯の白光がまぶしくて、ぐっと瞼を閉じる。
ユキが光を遮ってやるみたいに、額から瞼へと、そっと手のひらを滑らせた。
とても安心する香りと、温もり。
カナコはうとうとと、瞼を上下させた。
「はい、終わりー」
パン!と仕切るように手を叩いた、白衣を着た男。
――鬼切 獏。
ユキは男を睨みつける。
カナコのために薬を調合していた男だと、ここに来る道中に千景から話は聞いていた。
それでも、どこか胡散臭い。


