千景は足を止め、拳を握りしめた。
一方で、ユキは――……
「………」
カナコを腕に抱き、その場に静かに立ち上がる。
紫藤は低く、吠えた。
「殺すぞ」
ユキは伏せた顔を、上げた。
「……退けよ」
「………」
「退け。死にかけてる」
ユキのその言葉に、紫藤の顔色が変わる。
「………」
カナコの顔を見た。
青白い顔。
深く閉じた瞼。
後ろでガサ、と動いた千景に、部屋の奥へ視線を滑らせる。
……大量の、薬のフィルム。
「――……退けッ……!!!」
そう怒り叫んだユキの右目から、一粒の大きな涙が零れ落ちた。


