一方。
ユキと千景はおよそ同じ速度で駆け抜け、リビドーの扉の前に立った。
「………」
ユキは二本の内、一本の鍵を差し込み、リビドーを開錠する。
すぐさま千景が扉を開き、――リンッ!と鈴の音が激しく鳴った。
「こっちだ!」
前を走る千景の背中を追いながら、ユキは握りしめたもう一本の鍵を構えた。
鍵穴へ滑り込ませ、一気に押し回す。
――カチ。
金属音が鳴り響くと同時に、扉を力任せに開け放った。
「――かぁこ!!」
「ママ!!」
二人が彼女を呼ぶ。
視線の先でカナコは、ベッドの下にうつ伏せのまま倒れていた。
ユキはすぐさま彼女に駆け寄り、そっと肩に触れる。
二人は同時に止まった。
時間まで、止まったようだった。
ユキの目には、カナコしか映らない。
ただ、倒れた背中が以前より華奢になった。
顔を見るのが、少し怖かった。
一方で千景は、カナコを見てはいなかった。
それよりも。
「なんだ……これ」
自分が野間に託した茶色い紙袋。
そこから、薬のフィルムが大量に散らばっている。


