――――……
――……
シトウ町。
Z地区との境界。
――物陰に、ユキと千景。
二人は静かに潜んでいた。
ユキの手の中には、二本の鍵が握り締められている。
「………」
ユキのマンションのポストに、この鍵と手紙が入っていたのは数日前。
手紙に書かれていた内容は極めて簡素で、無駄がなかった。
日時と、当日のシトウの人員配置。
それだけ。
――『シトウはいずれ、盲目になります』
――『その隙に、カナコさんを取りに来てください』
ユキは深く考えずとも、その手紙の意味も、鍵がどこの鍵なのかも理解した。
「本当に野間を信用して大丈夫なんだろうな」
千景は今日この土壇場になっても、とても信用できなかった。
もしかしたら、罠かもしれない。
「そう思うなら、お前は来なくていい」
ユキはあの日の野間の背中を見ている。
言葉にはできない。
ただ、なんとなく。
ユキは野間を信じられると思った。
「……チッ」
千景は舌打ちをする。


