そこは、シトウ内の廃墟ビル。
元はゲームBARだったここ。
割れた酒瓶やグラスを何度も踏み、至るところに落ちた廃材を跨ぎながら、歩みを進めていけば。
闇の中。
ぽつりと浮かぶ、大きな人影。
「時間キッカリだな。お前らしい」
僕の前には――紫藤さん。
くたびれたソファに深く沈み込み、足を広げて座っていた。
「もう一度聞く。リビドーの棚。カナコの水。差し替えたのはお前か?」
「はい。僕で間違いありません」
このBarは、半年程前に紫藤さんや多夜さんと一緒に潰した箱だった。
今度はここで、僕が潰される。
「理由は?」
「理由は……言ってもあまり意味がない気がするので控えます」
僕が紫藤さんに報告をするのは、事実まで。
余計な憶測や感情は、報告しない。


