余所者-よそもの-【 3 】




「――超大作だ。どうだい?」



やがて背中一面に出来上がった絵。

それは、とても壮観だった。


「最後の最後まで、残酷な絵だ」

「大満足っす」

「ちなみに」

「はい?」


彫ったばかりの背中に視線を向けながら、彫師が尋ねる。


「この背中……” ガラスの義眼 “。内側から割れて、ガラスの破片が飛び散ってる」

「はい」

「この絵には、どういう意味があるの?」


僕はじんじんと熱い背中の痛みを感じながら、目を伏せた。


「ガラスの義眼は――特別な力を持たない、傍観者」

「………」

「ただ、視ているだけの眼だったんですよ」

「ふむ」

「なのに最後になって、余計な自我を出した」

「それで割れた?」

「はい、自分で割り砕いた。哀れな男です」

「ガラスの破片には、龍が映ってる。これは……腕の龍と同じ?」

「そうっす。最後の最後まで、ガラスの義眼が映し続けたものです」


いい絵を描けた。

僕にはもったいないくらいだ。


そっとシャツを着て、立ち上がる。

会計を済ませ、店を出ようとすれば、彫師は静かな声で僕の足を止めた。



「野間くん。背中は大きなキャンバスだからね」

「……なんすか?」

「スペース、ちょっと余ってる。絵に続きがあれば、またいつでも連絡ちょうだいよ」

「………」

「いくらでも、彫足すからさ」


僕は呆れた。

付き合いも長くなると、余計なことをされてしまう。


「やけに全体が小さく収まったなーと思ってたんすよ。ったく」


一言文句を言ってから、店を出た。


時間を見れば、ちょうど約束の時間だ。


僕はその足で、待ち合わせ場所へと向かう。